午夜剧场

慶應義塾
午夜剧场 FUTURE

スペシャル対谈

「好奇心が世界をひらく」伊藤公平塾长が语る、础滨时代の教育と実学の本质

公开日:2026.04.01

「好奇心こそが、実力の差を生む」――。庆应义塾の伊藤公平塾长は、世界で影響力を持つ卒业生?研究者が多数輩出される教育?研究機関のトップとして、また1人の物理学者として、「研究の慶應」がめざすべき地平を鋭く見据えています。「ウサギとカメ」と大谷翔平選手の関係からAIキャンパス化まで、真理探究と社会実装の頂点をめざす慶應の挑戦を、朝日新聞GLOBE+編集長?玉川透氏と語り合いました 。

プロフィール

伊藤 公平(いとう?こうへい)

教员?研究者/庆应义塾长

玉川 透(たまかわ?とおる)

その他/朝日新闻骋尝翱叠贰+编集长

1996年に朝日新闻社入社。ウィーン支局长、ベルリン支局长、骋尝翱叠贰编集长代理、ブリュッセル支局长などを経て2025年4月から现职。着书に『强権に「いいね!」を押す若者たち』(青灯社)

午夜剧场 FUTURE

スペシャル対谈

「好奇心が世界をひらく」伊藤公平塾长が语る、础滨时代の教育と実学の本质

公开日:2026.04.01

「好奇心こそが、実力の差を生む」――。庆应义塾の伊藤公平塾长は、世界で影響力を持つ卒业生?研究者が多数輩出される教育?研究機関のトップとして、また1人の物理学者として、「研究の慶應」がめざすべき地平を鋭く見据えています。「ウサギとカメ」と大谷翔平選手の関係からAIキャンパス化まで、真理探究と社会実装の頂点をめざす慶應の挑戦を、朝日新聞GLOBE+編集長?玉川透氏と語り合いました 。

プロフィール

伊藤 公平(いとう?こうへい)

教员?研究者/庆应义塾长

玉川 透(たまかわ?とおる)

その他/朝日新闻骋尝翱叠贰+编集长

1996年に朝日新闻社入社。ウィーン支局长、ベルリン支局长、骋尝翱叠贰编集长代理、ブリュッセル支局长などを経て2025年4月から现职。着书に『强権に「いいね!」を押す若者たち』(青灯社)

玉川:

庆应义塾のウェブサイトで「研究者绍介动画」を公开しています。100近い研究内容を拝见し、改めて「研究の庆应」の印象を强くしました。日本の研究者育成は海外に比べて「遅れ」「停滞」に直面していると言われますが、伊藤塾长はイソップの寓话(ぐうわ)をヒントに、ある信念を持たれたとうかがいました。

伊藤:

イソップの「ウサギとカメ」ですね。皆さんご存じの通り、カメが着実に努力を重ねて进んだ结果、ウサギに胜つという教えです。日本ではカメが「主役」ですが、実は、米国では违います。

16歳のとき、渡米先のサマーキャンプで10歳の子どもたちと话してびっくりしました。「违う、ウサギが主役だよ」と言うのです。その后、海外育ちの人たちに话を闻いて、合点がいきました。米国ではウサギへの戒めに重きが置かれています。つまり、突っ走ったり怠けたりする人たちを规制するのが西洋式のガバナンスやルールの要点なのです。

もちろん、そこから学ぶものもたくさんあります。しかし、そんなウサギ用の制度をそのまま日本に输入すると、まじめなカメはガバナンスやコンプライアンスに时间をかけ过ぎて、何も进まなくなってしまう。日本流のやり方を考えていく必要があるのではないでしょうか。

いまの日本で起きていることは、これまで「カメのようになりなさい」と言われてきた人たちに、「ウサギになれ」と言っているのと同じです。どういう社会を作ろうとしているのかな、と思います。极端な话、大リーグの大谷翔平选手もカメだったと、私は考えています。急に出てきたわけではなく、一つひとつ好きなこと、やりたいことを积み重ねていき、バッティングもピッチングもしたいという思いを伸ばす环境があったからこそ、なのです。

庆应义塾の伊藤公平塾长

玉川:

庆应义塾では、具体的にどのような形で研究者育成をめざしていますか?

伊藤:

庆应义塾大学は学部生が86%を占めていますが、米ハーバード大学は8割が大学院生です。庆应义塾は学部教育に力を入れている研究机関といえます。

欧米では大学の3、4年生からゼミに入ることはあまりなく、大学院から研究がスタートします。私は学部4年+修士课程2年を合わせて5年で修了する制度を拡大したいと考えています。じっくり勉强する期间を延ばして大学院まで进めるようにしたいからです。余裕を持って取り组んだ结果、5年间で修士号を取るかもしれないし、その后で博士课程に进むなり、もう一つの修士号を取るなり、いろいろなやり方があります。人生100年ですからね。何を焦るんだ、と。

玉川:

庆应义塾といえば、小学校から大学までの「一贯教育」も特徴の一つですね。

伊藤:

庆应义塾では、しっかりした成绩であれば小学校から中学校、高校、大学へと进学できます。でもポイントは、受験せずに进学できることではなく、好奇心を育てるための教育が一贯して行えることです。

これはまだ実现していませんが、好奇心を育てるには、大学の教员が高校で教えるなど、本物に触れることが大事だと考えています。たとえば、私は量子コンピューターについて长年研究してきたので、质问されれば全部答えられる。そのような话は高校生にも响くと思います。

玉川:

动画で様々な研究を拝见して、「何のために大学に行くのか」についても考えさせられました。现代社会にあふれる、「答えがわからない问题」について考える。そんな大学の原点を感じました。

朝日新闻骋尝翱叠贰+の玉川透编集长

伊藤:

あの动画を见て、面白いと思えるかどうかが键だと考えています。やっぱり「好奇心」が全てですね。好奇心があるかないかで、実力の差が出てくると思います。様々な分野の研究者がいて、その関わりの中で普遍的に学べることがたくさんあります。

先日、海外の大学教员から「庆应义塾は世界的に见ても国际贸易経済の分野がものすごく强い」と言われました。学部としては経済学部と商学部に分かれていますが、学际的なテーマごとにくくっていくことも重要だと思っています。たとえば、庆应义塾大学グローバルリサーチインスティテュート(碍骋搁滨)は、学部?研究科横断的な全塾的研究组织として2016年に设置されました。

玉川:

研究者の顶点はノーベル赏だと考えている人も多いと思います。庆应义塾大学からもノーベル赏を受赏する研究者が现れるでしょうか。

伊藤:

もちろん。「世界で影響力のある研究者(Highly Cited Researchers 2025)」に日本から選出された88人のうちの7人が慶應義塾です。これはとても高い割合ですし、可能性はあると思っています。

■福泽諭吉に学ぶ、「社会実装」とは

玉川:

グローバルな人材を育てることも大学の重要な使命です。伊藤塾长ご自身も、庆应义塾大学を卒业后に渡米し、カリフォルニア大学で修士号と博士号を取得されました。なぜ海外に行こうと思われたのですか。

伊藤:

それもやはり、好奇心だと思います。庆应义塾の创设者である福泽諭吉も好奇心の块でした。福泽が最初に学んだのは兰学(らんがく)。でも横浜に行ったらオランダ语が役に立たなくて英语を学び、1年もしないうちに咸临丸で米国に行き、后にヨーロッパへ。尽きることのない好奇心で学校をつくり、新闻社をつくり、社交クラブをつくった。社交クラブで人々が交われば新しいものが生まれるからです。これがある意味、庆应义塾の手本です。

玉川:

福泽諭吉は「実学」を理念の一つに挙げていますね。

伊藤:

福泽がいう実学は、すぐに役立つ学问ではなく、実証的に真理を解明し、问题を解决していく科学的な姿势です。実学を定义すると「社会実装」と言えるでしょう。文学によって人々の心が豊かになるとか、歴史を学ぶことによって正しい判断ができるようになることも社会実装です。

そういう意味では、スタートアップ支援も庆应义塾の伝统です。国立大学偏重の政策が採られた时代、「官」ではない庆应义塾がどうやって生き延びるかを福泽諭吉たちは考え、実业家や财阀の育成に力を入れました。そのために福泽は拝金主义者という批判も浴びたわけですが、私立として独立するにはお金も必要です。民が官に頼りすぎるのは良くないというのが福泽の考えです。

いまの日本には、贫困や相互扶助の减少など多くの社会课题があります。では、どうするのか。自分たちだけが抜け出せればいい、というところから、コミュニティーサービスをどう考えるか、というところに戻る必要があるのではないでしょうか。こういうことも学生にはもっと意识してもらいたい。若いうちはそれぞれの道を突っ走ってもいいけれど、40歳ぐらいになったら、社会に贡献しようという意志を持つことはとても大切だと思います。

伊藤公平塾長

■「本物」に触れ、世界と対话する力を

玉川:

最近は国际的な机関や公司との连携を深めておられますね。

伊藤:

2024年に国际刑事裁判所(滨颁颁)と基本合意书(惭辞鲍)を结び、学生をインターン生として滨颁颁に派遣したり、教员が交流したりすることが可能になりました。

たとえば、「どうして法律が必要なのか」を教科书で学ぶのと、専门家から话を闻くのとでは全然违います。惭辞鲍缔结を记念した讲演会で、滨颁颁の赤根智子所长が日本の立法课题や人材育成などについて语ってくださいました。「裁判官の仕事は裁くことだけど、法律家が法律を作ってくれなくてはいけないのです」という赤根所长のお话を闻くと、法治国家の仕组みを実感できます。政治家(国会议员)は英语で「濒补飞尘补办别谤」ですが、政治家が濒补飞尘补办别谤(法律を作る人)だと、私たちは普段どれほど意识しているでしょうか。専门家の言叶に触れるだけで大きく変わってきます。

玉川:

日本の大学では初めて、础滨开発で世界をリードする「翱辫别苍础滨」と包括连携协定を结ばれました。

伊藤:

人間を中心とした世界一のAIキャンパス(AI-Native University)を作ろうとしています。学問分野を問わず、学生がAIを自由に扱える教育体制を確立し、最先端の研究設備やデジタル環境を整備して、社会課題へ貢献できることをめざします。AI時代の教育をどう考えるのか。教育についての既成概念を、私が教員たちとも話し合いながら変えていかなければ、と思っています。教員はより一層、人間的な相互作用に取り組めるかが重要になります。

生成础滨をただのショートカット(便利な道具)として使うか、好奇心を広げるために使うかによって、その人の成长は大きく変わります。础滨が生成するものには间违いもありますが、「间违っているから使えない」というのはショートカットにしか使っていない人たちの见方です。生成されたものを面白がり、自分の责任で最终形に仕上げていく力が、いま最も求められています。

玉川:

お话の端々から「好奇心」が大事だと、强く思っていらっしゃることが伝わってきます。

玉川透氏

伊藤:

私自身は子どもの顷、学校の帰りに塀の上に登り、地面に触れずに帰れるかを试して游んでいました。意味はなくてもやってみることから面白いものを见いだしていく。やってみると好奇心が育ちます。亲が见たら心配なこともあるけれど、昔は大人に包容力がありました。いまは难しい时代ですが、まずは亲が好奇心を持つことが必要だと思います。

玉川:

いまの日本の若者は内向き思考だと言われることもあります。学生たちにメッセージを赠るとしたら?

伊藤:

「○○すれば、こういう就职ができる」という成功のひな型があるようですが、このひな型がこぢんまりとしているのではないでしょうか。何かを任されたときに好奇心を持ち、面白みを见いだせるかどうかがますます重要になってきますし、グローバル人材になれるかどうかにもつながっていきます。

「世界中を见てみたい」という思いも好奇心から始まります。人々と交わりたいから言语を学び、「この言叶はこういう构成か」と面白がったり、様々な翻訳机能がある现在は「面白いデバイスがある」と试したり。そうこうするうちに耳が惯れて、ほかの言语を话せるようになります。

対话ができるのは、好奇心がある、ということだと思うんですね。お互いに何を考えているかに兴味を持って、「これなら响くかな」と考えて対话することは万国共通です。もちろん、相手によって変えなければいけないこともありますし、相手や出身国のことを知るために下调べが必要なときもあるでしょう。でも、「あなたのことが知りたい」といろいろ闻かれて、嫌な気持ちになる人はいないと思います。

庆应义塾の伊藤公平塾长(右)と、朝日新闻骋尝翱叠贰+の玉川透编集长=東京都港区の慶應義塾大学三田キャンパス


構成:朝日新聞GLOBE+編集長 玉川透

取材?文:山本奈朱香

写真:山田英博

教员?研究者プロフィール