执笔者プロフィール

柘植 尚则(つげ ひさのり)
文学研究科 教授
柘植 尚则(つげ ひさのり)
文学研究科 教授
このところ、他人の利益をめざす〈利他〉がちょっとしたブームになっていて、タイトルに〈利他〉の付いた本もたくさん出ている。〈利他〉がちょっとしたブームになるのは良いことにちがいないが、それは、自分の利益をめざす〈利己〉が现代では当たり前になっている、ということでもある。だが、歴史を振り返ると、古代や中世では〈利己〉は强く戒められてきた。では、〈利己〉はいつごろ、どのようにして当たり前になったのだろうか。本书では、近代イギリスのモラリスト(道徳思想家)たちの论争を辿ることで、そのことを明らかにした。
近代のイギリスでは、利己心(自己爱)をめぐって、モラリストたちが议论を交わしてきた。近代の政治社会の基础を筑いたトマス?ホッブズは、人间は生まれつき利己的であると考えたが、多くのモラリストは、ホッブズに反対して、人间は生まれつき利他的でもあると考えた。だが、彼らは利己心を否定するどころか、利己心をおおむね肯定し、なかには、利己心を正当化しようとする者も现れた。たとえば、近代の経済社会をいち早く论じたバーナード?マンデヴィルは、利己心は社会に利益をもたらすと主张し、経済学の父として有名なアダム?スミスは、自由な社会では个人の利益と社会の利益が一致すると主张した。また、ホッブズ、マンデヴィル、スミスを批判したモラリストたちも、利己心を合理的なものと捉えたり、利己心と利他心(仁爱)の调和を唱えたりすることで、利己心の正当化に寄与することになった。近代のイギリスでは、このようにして〈利己〉が当たり前になったのである。
この论争は、近代イギリスのモラリストたちの间でなされたものではある。しかし、イギリスが近代をリードしてきたこと、ホッブズやスミスが近代の社会の形成に大きな影响を与えたこと、そして、近代の社会が现代のわれわれの社会につながっていることを考えると、この论争のもつ意味は重要である。〈利己〉が当たり前になっている现代にあって、〈利他〉をブームに终わらせないためには、この论争を踏まえて、〈利己〉についても改めて考える必要があるだろう。
柘植尚则
庆应义塾大学叁田哲学会丛书
106页、770円〈税込〉
※所属?职名等は本誌発刊当时のものです。