执笔者プロフィール

藤谷 道夫(ふじたに みちお)
文学部 教授[イタリア文学]
藤谷 道夫(ふじたに みちお)
文学部 教授[イタリア文学]
现代は嘘か真か判らない膨大な量の情报に溢れかえっている。ネットを见れば、それこそ无尽蔵の情报の海である。情报过多の最大の问题は、真実や本物の良书が隠されてしまう点にある。悪货は良货を駆逐してしまうからである。情报の海の中で现代人は何を頼りにして良いかも解らない状态にある。その时、最も頼りとなる道しるべが《古典》である。
何百年、何千年もの时がふるいにかけてくれているため、间违いがない。最も効率的に良书に出遭える。これが古典を勧める第1の理由である。第2の理由は「すぐに役に立つ本は、すぐ役に立たなくなる」(小泉信叁『読书论』)からである。时流に乗って売れる本は、时流が去ると、読まれなくなる。20年、30年前のベストセラーを谁が覚えているだろうか。文豪ゲーテが「エッカーマンとの対话」の中で当时のベストセラー作家の名をあげているが、われわれが知る作家や作品は1つもない。今书店で売れている本は10年も経てば、谁の関心も惹かなくなる。ところが、古典は违う。10年おきに书棚から引っ张り出して読みたくなる。そして読むたびに新たな発见がある。
人间の特性は今も昔も変わらない
古典と现代の书物の违いはどこにあるのだろう。现代の书物は解り易い。现在を舞台にしているので、背景知识や学习が必要ない。一方、古典は时代が古いため、过去にフォーカスするための努力と、ちょっとした感情移入が要る。しかし、それさえクリアーできれば、惊くほど多くの智慧を授けてくれる。なぜなら2千年前であろうが、AIが支配する高度に情报化された社会になろうが、个人の生活は基本的に変わらないからである。
现代になったからと言って、ホメーロスの『イーリアス』を読むために要する时间が短くなるわけではない。人间は昔と同様、生まれ、恋をし、老い(病を得て)死んでいく。どの时代にも梦や希望があり、挫折と失败、别れと出遭いがある。この基本的特性は人间である限り、いつの时代も変わらない。われわれが直面する様々な个人的な悩みは、これまでの何100亿人もの人类が直面してきた悩みと基本的に同じである。古典を知ることで、そうした膨大な叡智に接続できる。われわれの悩みは新しいものではなく、すでに多くの古人が経験したものでしかない。
古人と同じ辙を踏む必要はない。むしろ现代の问题は古人の智慧から学ばないことから同じ过ちを繰り返す点にある。ゲームをしていては経験も知识も広がらないが、読书によって无数の人生を体験することで、1人の生涯が万人の生涯に変貌する。これ以上の宝があるだろうか。
古典はなぜ良书なのか
古典には良书しかない。それは现代の书と违って、古典は无数の诗人や作家が手掛けて出来上がったものだからである。一例を绍介しよう。谁もがシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』という作品名は知っている。だが、これはシェイクスピア1人が书いた创作ではない。一番古くは1476年ナポリで出版されたマスッチョ?サレルニターノの『マリオットとジャンノッツァ』に遡る。次にこの筋书きをルイージ?ダ?ポルトが翻案し、1530年『高贵な二人の恋人たちについて新たに発见された物语とその哀れを催す死』という题でヴェネツィアから出版する。オウィディウスの『変身物语』にある「ピュラムスとティスベ」の物语やボッカッチョを採り入れて、筋も登场人物も、后のシェイクスピアの作品にかなり近づいている。舞台もシエナからヴェローナに移り、恋人たちの名前も《ロメウスとジュリエッタ》となっている。
2人は反目しあうモンテッキ家とカプレーティ家の子息という関係であるが、ダ?ポルトがダンテ『神曲』炼狱篇第6歌106行目に登场する「モンテッキ家とカプレーティ家」を、両家が反目を重ねていると误読した结果である。详细は省くが、その后、6人の作家たちがこの物语を书き直しているうちにフランス语へ、さらには英语に移され、最后にシェイクスピアが今ある形に仕上げた。现代であれば、着作権の问题からこのようなことはなし得ないが、古典には着作権がないため、多くの作家の手が入り、余分な枝叶は切り落とされ、そのつど洗练されていく。それゆえ、古典は常に完成された美しさをもつ。
ギリシャ神话も同じくオウィディウスの『変身物语』によって完成されるまで800年もの间、无数の诗人たちによって书き换えられ洗练された。无数の书き手が、その都度、自身の経験と智慧を作品の中に注ぎ书き足しているため、まさに智慧の宝库となっている。ダンテの『』に至っては、それ以前のすべての文学?哲学と圣书の最良の部分を取り込んでいるため、人类が作り上げた最も有机的で完成されたものに仕上がっている。これが古典と现代の作品の违いであり、この贵重な遗产を使わない手はないであろう。
※所属?职名等は本誌発刊当时のものです。